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文化や視点の違いが生み出す作品の豊かさ|メイキングオブ:化け猫あんずちゃんレポート



2024年11月1日(金)〜5日(火)に開催された「第11回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」。その一環として、コンペティション長編部門入選作品『化け猫あんずちゃん』の制作背景を紹介する「メイキングオブ:化け猫あんずちゃん」が行われました。トークには監督の久野遥子氏、山下敦弘氏、プロデューサーの近藤慶一氏が登壇し、作品制作の裏側に迫るエピソードが語られました。
11月15日からの北米での劇場公開を目前に控えていた今回、英語吹き替え版での予告編を視聴し、トークをスタートしました。

映画祭での出会いからはじまった物語

『化け猫あんずちゃん』が日本とフランスの共同制作となるきっかけは2018年、新千歳空港国際アニメーション映画祭での出会いでした。当時の映画祭メインビジュアルを手がけた久野監督が、コンペティション長編部門の審査員で来日していたフランスを代表するアニメーションスタジオ「Miyu Productions」のエマニュエル氏に声をかけられたことから、共同制作のアイデアが形になったといいます。

近藤プロデューサーは、「私たちが愛してやまないこの映画祭で皆さんに完成作品を披露できるということが本当に嬉しく、感慨深い思いです。また新千歳空港の温泉に入って一杯やりたいです」とMiyu Productionsのエマニュエルさんとピエールさんからのメッセージを読み上げると、会場からの温かい拍手で包まれました。

そのときの出会いについて、久野さんは「エマニュエルさんが初めて声をかけてくれたとき、そのキラキラした目が印象的でした」と当時を懐かしそうに振り返りました。

「ロトスコープ」により制作された本作と共同監督という体制について

本作の特徴的な制作手法として採用された「ロトスコープ」は、実写映像をトレースしてアニメーション化する技法です。実写撮影には、あんずちゃん役に森山未來ほか、青木崇高、市川実和子、鈴木慶一など実力派俳優が参加。アニメーション制作に先立ち、ほぼ一本の実写映画が撮影されたと言っても過言ではありません。
実写監督を務めた山下さんは、ロトスコープの手法について事前に説明を受けた上で制作を開始し、芝居や演出に関しては久野さんと綿密に相談しながら進めたと語りました。
アニメーションだけで作られたのは全部3割ぐらいで、それ以外は実写を基にアニメーションが作られていると話し、「極力音声も、実写撮影で収録したものをアニメーションにも使うというのが、この作品の大事なポイントだった」とも近藤さんが明かしました。

さらに制作過程でアニメーションになっていくプロセスが興味深かったと話す山下さん。これに対し、近藤さんから「実写の印象を損なわずに森山さんを猫にするっていうのがとても難しい」と、実際に俳優陣による実写映像とアニメーションの比較映像も見せてもらい解説してくれました。それぞれの実写での素材からアニメーションとして表現する際に作られた、キャラクターデザインも、俳優さんの表情や動き、衣装などもかなり忠実に再現しつつアニメーションとしてデフォルメされている様子に、その紹介では会場から笑い声も起こりました。

久野さんは「アニメーション作家は一生懸命頭の中で動きを考えていく、動かしていく」ものであることと話しつつ、「お芝居のプロが出してくるものの面白さ、環境と役者同士の関わり合いで生まれる偶然性など、頭の中では起きないことがたくさんあって、なんて豊かで大変なことだった」と強調し、その挑戦の過程を明かしました。
これについて、役者の小さなお芝居がきちんとアニメーションとして残っていることを指摘された久野さんは「お芝居が良いからこそ、お芝居が良いからこそ、どうやってアニメらしいメリハリをつけるかというのが難しかった」とロトスコープならではの悩みについても打ち明けました。


左からプロデューサーの近藤慶一氏、監督である山下敦弘氏と久野遥子氏

日仏合作が見せてくれた豊かさ

Miyu Productionsが参加する3〜4年前から、日本チームだけでシナリオを進めていたという本作。「MIYUが参加してからは、フランスからの意見を取り入れながら結構変わっていったという印象」と話す山下さんに、久野さんは「例えば、妖怪や地獄、温泉みたいな日本ならではの要素を面白がって、結果的にはそこの要素を少し増やそうかみたいな感じになった」と言います。

今回の日仏分業体制で行われ、日本側で原画・動画といったアニメーションの制作が行われつつ、フランス側では背景美術・色彩設計を手掛けました。
「フランスのスタッフは、作家性が強い方たちが多い印象で、たくさんのアイデアを持ってきてくれた」と久野さん。美術背景を担当するジュリアンさんは、原作を読んで印象派のボナールという作家のイメージを参考として提示してきてくれたと明かします。

まずはジュリアンさんと久野さんで、実写映像から重要そうなカットを選んで、そこから”カラーボード”を作り、日本でレイアウトを、フランスで線画と色をつけていくという役割だったと言います。
「ジュリアンさんたちじゃなきゃ描けないカットがたくさんある」と印象的なシーンを振り返り、文化の違いや宗教的な感覚によるアウトプットの違いが豊かさに繋がったそうです。

「化け猫あんずちゃん」が示す協働による価値

また合作の利点について近藤さんから問われて「作品の豊かさ」を挙げた山下さん。「日本人が見た日本の風景ではないものをフランスチーム、ジュリアンさんが作ってくれた。やっぱ違う厚みが出たかなとはすごく思った。すごく噛み合った」と。久野さんは「MIYUのチームの作品ファーストの姿勢はすごい。狭くなった視野を広げてくれた、盛り上げてくれた」と日仏合作の意義を力強く語ります。

山下さんは、「世界中で上映されるアニメーションのすごさ、アニメの力を感じた。ロトスコープの経験を次に繋げたい」と制作を振り返り自身の思いを述べました。
近藤さんは、「この映画は10年前に僕が企画したんですけども」と、なかなか制作段階に進めることが出来ない中で、原作・シナリオの良さ、試みの面白さを評価して手を上げてくれたのがMiyu Productionsであったことを振り返り、「売り上げがをどうこうではなく、面白い映画を作るためにどうすれば良いかを皆さんで考えた映画だった。何か問題が起きてもみんなで考えられたから面白い映画づくりができたと思う。」と締めくくりました。

本映画祭におけるこれ以上ない国際的なコラボレーションの実現に感謝を込めながら、さらなるアニメーション文化の発展を目指す意欲が高まるトークイベントとなりました。

映画『化け猫あんずちゃん』公式サイト
https://ghostcat-anzu.jp/

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