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映画祭レポート⑦/実写ではなくアニメだから出来ること「社会で起きていることを描きたかった」メイキングオブ:無名の人生 開催レポート

『無名の人生』
『無名の人生』

新千歳空港ターミナルビルを舞台に11月21日(金)から5日間にわたり開催した「第12回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」では、11月23日(日)、長編コンペティション部門入選作『無名の人生』のメイキングトーク「メイキングオブ:無名の人生」が行われ、監督の鈴木竜也さんが登壇しました。
鈴木監督は1994年生まれ、宮城県出身。コロナ禍をきっかけにアニメーション制作を独学で開始。短編作品が複数の映画祭で受賞し、長編デビュー作となる本作をクラウドファンディングで制作しました。
仙台の実家にこもり、約1年半で脚本・作画・美術…すべて一人で完成させた話題作です。
聞き手は長編部門選考委員である、株式会社MADHOUSE プロデューサー田口亜有理さんです。

キャラクターがニョキッっと生えてきた ー ユニークな制作手法と特徴に迫るー

「脚本も絵コンテもなく、全10章の構成をアドリブで作った」と鈴木監督は語ります。
タイトル『無名の人生』が最初に浮かび、名前と人生をテーマにすることだけを決めて制作を開始したそうです。 「キャラクターは、登場させたかったというより、こういう状況になったから現れてきた…ニョキッと生えてくるような感じでした」と振り返りました。

鈴木竜也監督
鈴木竜也監督

構成は「実家のカレンダーの裏をメモ代わりに使ったものだけ」と会場に実物を持ってきて来場者に見せてくれた鈴木監督。構成を考えたという“証拠”はそれだけしかないそう。
制作にあたってのトラブルは?と田口さんに問われ、「人気者だった祖母の部屋にこもって作業していたら、朝になると近所のおじさんたちが窓をノックして祖母の位牌に「おはよう」って言ってくる。それがうるさくて、窓に〈赤ちゃんが寝ています〉って貼り紙をしたら静かになりました。それが一番のトラブルでしたね」と会場を笑わせました。

作品はアドリブ的に、ある種ロールプレイングゲーム的に進みながらも、伏線を後から作ることができたと語ります。「意外と後づけでも整合性は取れる。漫画家さんの気持ちが少し分かった感覚でした。一人で全部できる分、柔軟に変更できたのが良かった」と話しました。

田口亜有理さん
田口亜有理さん

また映像面では、構図や色彩にも強いこだわりがあります。
「大学の頃からシンメトリー構図が好きで、アニメだとそれが完璧にできるのが楽しかった。どのカットで止めてもキマるように意識しました」と語りました。色彩については「各章に入る前に30色のパレットを決め、その中からしか使わない」とルールを設け、限られた色数で物語の変化を表現。
その他、アニメ制作のノウハウやセオリーを持っていない鈴木監督だからこその制作プロセスに、聞き手の田口さんも興味津々でした。

劇場でやることは決まってないけど劇場でやる気で作っていた ー 完成までの道のり

制作期間はおよそ1年半。すべてをひとりで手がけた鈴木監督。
「資金はクラウドファンディングで集めました。企画書も台本もないままひたすら描き進め、70分目くらいまでの完成途中の作品を各所に送り、そこからキャスティングやスタッフィングを進めました。」と劇場公開までの道のりを明かします。この過程で、『音楽』『ひゃくえむ。』の岩井澤健治監督がプロデューサーとして参加し、その後劇場公開が決定。
「劇場で上映できることが決まったとき、“もっと遠くに行ける映画にしたい”と思って、ラストシーンを作り込みました」と語りました。

また田口さんに、今敏監督の影響について質問されると、鈴木監督はあまり多くのアニメには触れていない中でも今敏監督が好きであること、また以前本映画祭の短編コンペティションにノミネートされて来場した際に「『千年女優』の爆音上映を観て、めくるめく壮大な七変化をやりたいという思いがありながら制作していた」と語り、「かなり影響を受けていると思う」と明かしました。

トークの様子

社会で起きていることをアニメで伝えたかった ー 各国での反応と受け止められ方

『無名の人生』が国内外で上映されていることについて鈴木監督は「今年初めてパスポートを取って4カ国を回りました。どこの国でも、オーディションのダンスシーンで笑いが起き、最後の丸いものは何だ?と必ず聞かれる。結構みなさん同じ感覚なんだなと感じた」と言います。
「観る時間だけで終わらない、ぐるぐる考えながら自分で咀嚼できる人は楽しめる作品になっている」と手応えについて語りました。

会場の様子
会場の様子

この日のトーク会場は、先ほど映画を堪能したばかりの観客で超満員。田口さんから観客に質問がある方と投げかけると、さまざまな質問が上がりました。
エンドロールに流れる“似顔絵”について質問されると、クラウドファンディングのリターン(返礼品)として360人の似顔絵を描いたことを明かし、「購入額に差をつけず、全員平等にしたかった」「サイン入り台本よりも、似顔絵を描いて感謝を伝える方がいいと思った」と語り、またその一枚一枚が絵の練習にもなったと笑いました。
また、本作には全10章の中に、高齢ドライバーや芸能界の闇、若年層の不詳の死、戦争などといった現実の問題が織り込まれています。作品に社会的事件を盛り込んだ理由について問われると、「実写でやるとエグくなりすぎるけれど、アニメにすると角が取れて、伝わりやすくなる。だから社会で起きたことをアニメで描きたかった」と明かしました。
熱気冷めやらぬまま、トークプログラムが終了し、大きな拍手が鈴木監督に送られました。
ぜひこの先の鈴木監督の動向にもご注目ください。

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