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渡辺こころ
WATANABE Cocoro2003年4月17日福岡県生まれ、2022年4月武蔵野美術大学造形構想学部映像学科入学、2026年3月卒業予定。大学入学前までは漫画制作を中心に活動、その後大学で映像表現の面白さに触れ、大学にて三年間、実写を主に勉強したのちアニメーションの制作を始める。自身のイマジナリーフレンドとの関係や、「ずっと共に生きていく自分という友達」をテーマにアニメーション制作に取り組んでいる。

PARTICIPANT REFLECTION
新千歳空港国際アニメーション映画祭NEW CHITOSE TASに参加させていただきました。
TASの存在を知ったのは、卒業制作を進めていた夏、大学の先生からお知らせをいただいたことがきっかけでした。
私は1年ほど前から本格的にアニメーション制作を始め、制作経験はもちろん鑑賞経験も乏しく、映画祭へ足を運んだこともありませんでした。そんな中で、自作品のプレゼンテーションに加え、映画祭をフルに体験できる今回のプログラムはとても魅力的に感じ、すぐに応募を決めました。
ひとつひとつのプログラムで学んだことをはじめ、映画祭を通して感じたこと、考えたことをレポートします。
まず自作品のプレゼンテーションですが、多くの方に足を運んでいただきました。普段大学の中でしか自分の作品について話してこなかったので、学外の方に広く自分のことを知ってもらえる初めての機会で、とても嬉しかったです。
質疑応答では、作品はもちろん、作家自身に関する質問をいただいたり、発表のあと「楽しみにしてます!」と声をかけていただいたりして、見てくれる人がいるんだ、という実感と共に作家としての自覚が芽生えるきっかけになりました。
その後、プレゼンを基に、ディスカッションという名のもとプログラムアドバイザーの岩崎さん、四元さん(注3)からアドバイスをいただきました。作品についてはもちろんですが、プレゼンの仕方まで丁寧にフィードバックをいただけたのが印象的でした。
本映画祭ではNeWNeW(注4)選出作家様のお披露目会など、ピッチコンテストに関するプログラムが充実しています。作家活動を続ける将来を見据え、単に作品そのものの良さだけではなく、自作品の魅力を伝える力の重要性とその具体的な方法についても教えていただき、大変勉強になりました。
注3:本映画祭プログラムアドバイザーの岩崎宏俊、四元明日香
注4:「New Way, New World: Program for Connecting Japanese Animators to the World」の通称。「文化芸術活動基盤強化基金(Japan Creator Support Fund)」による短編アニメーション分野のクリエイター育成プログラム。
私は主に作品の音(音質や声優)についてご指摘をいただいたのですが、いただいたアドバイスの重要性を、その後の上映ですぐに確認・実感し、咀嚼できるスケジュールになっていたのがとてもありがたかったです。
またディスカッションでは、TASメンバーそれぞれが最も好きだと感じた作品を1つずつ推薦しあうという「選考の疑似体験」を行いました。魅力的な作品ばかり並ぶ中からどの作品を優先するかディスカッションを重ね、気づいたら優先度が逆転していたりして驚きがありました。
「入選作品の選考」と聞くと、クオリティの高い作品とそうでない作品にきっぱり分けられ、すぐに結果が決まるようなイメージを持っていましたが、実際はかなり難航する上に単なる良し悪しだけで決まるものではないと実践的に体感できたのは、凄く新鮮な体験でした。加えて、さまざまな視点や価値観を持つTASメンバーとの意見交換はとても刺激的でした。
後から「いろんな考慮ポイントを考えると、あの結果で良かったのかな……」と、かなりモヤモヤしましたが、岩崎さんや田中さん(注5)から、実際の選考現場でも同じことが起きると教えていただき、「自分の作品が落選したからといって、落ち込みすぎる必要はない」といったお話をいただきました。今まで作品をコンペに出して良い結果が出なかったとき、作品そのものを否定されたような気持ちになり、気落ちすることも少なくなかったので、この体験をさせていただけたことはとても大きかったです。
注5:本映画祭プログラムアドバイザーの田中大裕
更に、TAS参加者には交流会への参加が認められていました。
ずっと大好きだった作家さんたちと実際にお話しすることができ、普段見ていた作品の向こうにはちゃんと作り手の方がいて、作品って本当に自分と同じ人間の手によって作られているんだと思うと、作品というものへの愛着がより強くなりました。
また、作品を観る中で「これは発見して持ち帰りたい!」と個人的に決めていたテーマがありました。それは、映像の身体性についてです。
映像作品はサイズ可変であり、直接触れるものではありません。上映の度に様々なスクリーンの中を移動することができます。
しかし、確かにその作品特有のサイズ感や、現実空間への侵食を感じる作品があり、それぞれの印象は何に起因しているのか、ずっと気になっていました。
注意して鑑賞していると、個人的に「スクリーン枠内だけの限定的な世界」のように感じる作品もあれば、逆にスクリーンは作品世界に置かれた定点カメラでしかなく、スクリーンの向こうには現実と同じように世界が広がっているように感じる作品もあると気づきました。また、スライムに似た質感に感じる作品もあれば、水のようだと感じる作品もありました。
交流会では、作家さんに制作方法や制作中に考えていたことなどを教えていただきながら、映像の輪郭や身体性についてお話しさせていただきました。
私はかねてより「ポケットに入れられるお守りのような作品を作りたい」と考えており、今回、貴重な交流を交えた映画体験を得る中で、自分の理想の表現に近づくヒントをたくさん得ることができました。
まだ形を持たない、頭の中のアイデアや言葉にならないイメージに、どのような身体を持たせてあげられるか。今後の制作に大きく影響するテーマを見つけることができて、制作のモチベーションも上がりました。
また、入選作品を見ながらずっと感じていたことは「映像の操縦力が半端じゃない……!」ということです。作者が映像を乗りこなしているのが容易に伝わってきて、自分の体の延長線上に映像を操っているようだと圧倒されました。映像が体を持って生きている感覚に飲まれ、アニメーションってなんて豊かなんだと感動しました。
映画祭が終わって1ヶ月ほど経ちましたが、未だに大学からの帰り道や電車の中で、映画祭で見た素晴らしい作品たちを思い出し、作品の世界に浸る瞬間が多々あります。その世界が作品として現実のどこかに存在してくれていると思うと心が癒される感覚があり、アニメーションって、直接鑑賞していない時間にも感動を与えてくれるのだと胸がいっぱいになりました。
今回いただいた素晴らしい機会の中で、本当にたくさんの学びと発見がありました。アニメーションという素敵なメディアに愛を持ち、真剣に向き合っている方々とご一緒することができ、アニメーションをもっと好きになれた5日間でした。今回感じたたくさんのことを、これからの作品制作に活かしていきたいと思います。
最後に、今回選出いただき、ご指導くださったプログラムアドバイザーの皆様、本当に素晴らしい機会をありがとうございました。